ナガオカケンメイ
2012年8月
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LONG LIFE DESIGN

D&DEPARTMENT PROJECT代表取締役会長 d design travel編集長
1965年北海道生まれ。日本デザインセンター原デザイン研究所を経て、2000年東京世田谷にロングライフデザインをテーマとしたストアインフラをイメージした新業態「D&DEPARTMENT PROJEC」を開始。現在、大阪、鹿児島、札幌、静岡、沖縄など6店舗で展開し47店舗を目指す。同時にデザイナー目線で一人称で書くトラベル誌「d design travel」を同じく47都道府県分を取材、執筆、発行。日本企業の創業の原点を見直すブランド「60 VISION」はカリモク、アデリアなど12社と展開中。2011年から渋谷ヒカリエ8/のフロアディレクションと同時に、上記したプロジェクトの総本山的な場所「d47」を開始。ストア、ミュージアム、食堂を展開。ロングライフデザインを別角度から見て、Comme des garconsとのコラボストア「GOOD DESIGN SHOP」も表参道にて展開中。




鈴木輝隆展  ロングライフデザインを産むには、ロングライフな愛が絶対に必要。

デザインの生まれ方にはいくつかある。企業がビジネスとしてデザインを使う生み方。家電や車などのこと。かなり戦略的にデザインが使われる。その価値や寿命などを扱うプロによる生み方がひとつ。これは大企業になると、経営者のデザインへの理解というよりは、周りのコンサルティング、マーケティング会社の仕業。ま、意地悪く言うと、偽装の愛。笑
デザイナーから生まれることもある。あ、ここで僕が言っている「産む」ということは、なんらかの商売ベースで店頭に並んだり、人が買ったりするものに落ちたときを言っています。なので、デザイナーというのは、それを仕事としてするプロですが、そのプロが製品製造のリスクを持って、作り出す場合がある。最近、多い。この場合、デザインがかなり過保護で生活用品としてはあんまりなものが多い。例えば、タオルに何かをプリントしてグッズにする。しかし、それを日常で「タオル」として使わせるのは、正直、チャチだ。記念品レベルなものが多く、多くはゴミだ。コンセプトやデザインが重視されるあまり、見た目や話題にはなり、数も出るが、そもそもの生活品としてそんなものは使いたくない。
中小企業が殆どの日本。下請け工場の社長のアイディアやデザインは、自腹を切って発信しているので、それなりに必死だ。家業である旅館をついで、あるまとまった資金で改装する。そんな時に「昔からデザインが大好き」という跡取りによるデザインは、よっぽどのことがないと、悲惨になる。つまり、デザインとはどこまでいっても専門性が求められる。

デザインのよいと言われるものは、実はある複数の要素のバランスがいいものを言う。その要素とは、需要、コスト、流通、トレンド、社会性、形状素材、安全性、品質・・・。
デザインを「形や色」のことだけだと思っていると、多くは失敗する。かっこいいが、売れない。かっこいいが、使えない・・・・。デザインは産むのが大変だ。

いいデザインは「いいデザインチーム」から生まれる。これは間違いない。どんなに有名なデザイナーも、ひとりでは「いいデザイン」は絵には描けるが、生み出せない。どう販売するか、どう流通させるか、どうコストをコントロールするか・・・・。チームのバランスがロングライフデザインにしていく。

明日から東京銀座松屋の7階デザインギャラリーで開催される鈴木輝隆さんの展覧会は、そんなチームとしてバランスよくデザインが産み落とされた好例ばかりを集め、解説しているとても意味深い企画展だ。
デザイナーは有名になればなるほど、扱いが厄介だ。専門性も自意識もマックスな彼らに「いいデザイン」を産み落としてもらうためには、いろんなことをしなくてはならない。もちろん、ご機嫌も取らないとならないが、そんなことばかりではない。
例えば、鈴木さんはある時は行政マンだったり、ある時は大学の教授だ。デザインが大好きで、デザインの力を心から信じている。しかし、自分でデザインするようなことはしない。地方で、「こんなにいい商品なのに、どうしてデザインがいけてないのか」と思うものに出くわすことがある。鈴木さんはそれを見つけ、例えば、原研哉さんや梅原真さんらに頼む。そのものになぜ、デザインが必要か、それがデザインをまとって産み落とされた時に、その土地や企業に多大な「何」をもたらすかを説得する。時にはまったくギャラのないこともあるかもしれないが、それが産み落とされると、その産地や企業は生き生きとしてくる。それは「売れる」ということでもあるが、それ以上の「愛」によるみんなが手を伸ばしてしまうなにかかわいい状態。それを鈴木さんは生むのがうまい。
全国のそうしたものへのアンテナもネットワークも相当ある。もちろん、自身が活動している「ローカルビジネス」研究会のようなことの積み重ね。つまり、デザインが大好きだからことできる「土台づくり」に興味がある。そして、その「土台づくり」という大変な作業の様子や実績に心を動かされ、世界的に活躍する建築家やデザイナーたちが、鈴木さんの仕事を引き受ける。
鈴木さんのそんな全国を飛び回り、花から花へ受粉して実らせる様子を、みつばちと愛称付けたのも原さん。今回の展覧会のタイトルでもあり、会場構成も原さんが引き受けた。

そんなみつばち鈴木さんの仕事のやり方は、ちょっとやそっとでは真似できない。いや、絶対に真似できないし、生半可に憧れて真似されても困る。それほどに意義深く、高度な仕事をわかりやすく展示している。
鈴木さんから生まれたものには「愛」がある。生まれる前から愛に包まれている。それにデザインが必要だという真心がある。それが製造や経営者、販売に伝わって、いつしかロングライフデザインとなっていく。
最終的に息の長い商品には、どこかに人の気配がある。それを企画展でぜひ、感じて欲しい。今、日本に必要なひとつ。それが「デザインを産み落とすための愛」だと思う。そして、「育てたいと思うデザイン」だと思う。しかし、それは相当難しい。
細く、長く、愛され、売れ、その土地を支え、その土地のストーリーを伝えるものに育てる。みつばち鈴木さんの仕事はそんな仕事だ。

http://designcommittee.jp/2012/07/20120719.html


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